2019年05月22日

映画『漫画誕生』大宮のお寺で先行上映!監督やキャストらも登壇

映画『漫画誕生』大宮のお寺で先行上映!監督やキャストらも登壇

ライター : シオ・コージ

埼玉が生んだ近代漫画の開祖・北沢樂天の生涯を描いた映画『漫画誕生』(主演:イッセー尾形 監督:大木萌)が、この秋公開の運びとなった。

オール埼玉ロケで製作されたこの作品、氷川神社見沼たんぼなど、埼玉県民にとってはおなじみの風景も登場する。

5月12日には大宮のイベント「第12回アートフルゆめまつり」の一環として、市内東光寺の本堂で特別先行上映された。

入場は無料、一般のお客へのお披露目は今回が初となる。


近代漫画の開祖、北沢樂天とは

明治の時代に西洋漫画の手法を学び、日本の近代漫画を確立した北沢樂天。

『フクちゃん』の作者、横山隆一など、戦後活躍したマンガ家には樂天と師弟関係にあった方が多い。

漫画界の祖父ともいえる人物だが、出身はなんと埼玉県の大宮(現さいたま市)。

北大宮に残る彼の旧居跡地は、現在さいたま市立漫画会館となっている。

お寺が映画のシアターに

映画の上映会場となった東光寺は、大宮駅東口から歩いて5、6分。

一つとなりの東武スカイツリーライン北大宮駅からも歩いて行ける。

春日部方面から電車で行く場合、終点の大宮まで行くより北大宮で降りれば、わずかひと駅ちがいで50円のおトク!

ビルに囲まれたお寺の境内には、椅子やテーブルも用意され、思い思いにくつろぐ人々の姿が。

緑も多く水も流れる都会のオアシスだ。

上映会に長蛇の列

本堂入口では13時から整理券が配布され、長蛇の列ができる。

お寺で映画を上映というユニークなこころみが、多くの人々の関心を集めたようだ。

樂天に関する書籍も販売されている。

明治から昭和を生きた芸術家の物語

畳の上にたくさんの椅子が並べられた本堂は、開場と同時にほぼ満席に。

劇場とは一味ちがう雰囲気に、お客も期待が高まっている様子。

物語は、日本が太平洋戦争に向かいつつある昭和18年から始まる。

戦意高揚のための翼賛漫画を描かなければならない時代、弟子たちと考え方が合わずに苦悩する樂天を、イッセー尾形がシブく演じる。

篠原ともえ演じる、妻との心の通い合いも見どころだ。

歴史的事実を背景に、福沢諭吉や、反骨のジャーナリスト宮武外骨など、同時代の有名人も登場する。

戦後は弟子たちに道をゆずり、時流からもはずれてしまった樂天。

ある意味では悲劇の人でもあったが、無報酬で子どもたちの似顔絵を描くなど穏やかな晩年を送っている。

時代に翻弄された芸術家を描きつつ、夫婦の愛にも焦点をあて、ほのぼのとした印象が残る映画だった。




監督や出演者があいさつ

上映後のトークショーでは、大木監督はじめ、映画の中で検閲家や女中、樂天の弟子を演じた役者さんたちがスクリーンの前に並んであいさつ。撮影のエピソードや感想を語った。

かねてから、これまでスポットがあたらなかった人たちの映画を撮りたかったという大木萌監督。

デビュー作『花火思想』が北沢樂天顕彰会理事でもある漫画家あらい太朗さんの目にとまり、今回の映画制作につながった。

おもなロケ場所に使われたのはさいたま市岩槻の古民家、加藤邸。

広い屋敷で、部屋もたくさんあり「この家の持つ力も、映画に大きな役割を果たしているのでは」と大木監督。

女子会みたいなトークショー?

出演者のみなさんも、それぞれ映画に参加した思い出やエピソードを披露。

「樂天はたまたま戦争の時代に生きてしまった。これからも戦争をしないでほしい」

「撮影では白塗りし、インパクトのあるシーンになりました」

「スタッフとして照明車の運転もしました」

などと話が尽きない。

監督と女優さんたちのやりとりからは、すっかり打ち解けた様子がうかがえ、まるで女子会トークのような雰囲気だ。

埼玉は漫画発祥の地だ

撮影からおよそ2年、『漫画誕生』は、この秋いよいよ一般公開を控えている。

待ちに待ったお披露目に「樂天の生き方は、現在さまざまな仕事につく人たちにも参考になるのではと思います」と大木監督。

映画のあとに樂天を偲ぶ

近代漫画の基礎を築いた功労者が、大宮にゆかりある人物だったことはそれほど知られていない。

アニメの聖地も多い埼玉県だが、漫画文化の始まりにも大きくかかわっていたことを、映画公開をきっかけに多くの人に広まってほしい。

映画が上映された東光寺には樂天のお墓もある。

鑑賞後、お寺の裏手に広がる墓地をたずねると、ユーモアをたたえた本人像が迎えてくれた。

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シオ・コージ

サイタマの片隅に生えた雑草ライター。県東部の地域フリーペーパーを中心に執筆。得意ジャンルは本、映画、音楽などですが、書く場所がなくてもっぱら個人ブログで発表。春日部市在住。



関連リンク


漫画誕生

http://mangatanjo.com/

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