埼玉の未来は戸田市がリード?増える財政破綻地域…「ありえへん世界 埼玉&千葉&神奈川衝撃生態調査」
ライター : シオ・コージ
テレビがどのように埼玉を伝えているかウォッチングするこのシリーズ。
今回は、3月19日オンエアのテレビ東京『ありえへん世界』。
関ジャニの村上信五さんがMCをつとめ、東京を包囲する埼玉、千葉、神奈川県について美輪明宏さんらとトークを展開した。
埼玉も含め、これら三県は東京のベッドタウン化が進み、あまりおもしろいネタなど転がっていないのでは、といちまつの懸念もあったが……。
はたして、おもしろいネタは見つかるのだろうか?
埼玉の未来は戸田がリードする?
トップバッターは埼玉県戸田市。埼京線で池袋から約20分。
筆者的には、埼京線が通るまでなにもなかったところというイメージだが、意外にも県内では「住みやすさ」「これから伸びる街」「人口増加率」の各ランキングで堂々の第1位。
今いちばん勢いのある街だという。
戸田市の自慢は、公園が市内に91箇所もあるところ。子育て中の若い母親たちには大助かりのスポットだ。
そして、地元のスーパー「マルヤス戸田公園店」。
この店は、期限切れの食品を激安で販売、地元民の食生活を支える心強い味方となっている。
期限切れといっても、食べるのにまったく問題ない範囲内で、衛生的にも法律上からもノープロブレムとのこと。
店長は以前コンビニでアルバイトしていたときに、大量に廃棄される売れ残りの期限切れ食品に心を痛め、こんな商売を始めたのだそうだ。
食べ物を大切にという心意気は見上げたもの。最近話題となっているフードロス問題にも一石を投じそうだ。
千葉市の企業は従業員にやさしい?
続いて千葉県からは、千葉市の話題。
東京から総武線快速で40分の県庁所在地だ。
街なかの風景で目を引くのは、駅前を行き来する2両がつながった連節バス。
人口急増に対応するためで、ちなみにベンツ製だ。
こんなイモ虫みたいなやつが街なかを走りまわっていれば子どもは大喜びだ。
さらに番組は、とある運送会社を紹介。
社屋が雨漏りするような、こういっては失礼だがボロい会社。
しかし福利厚生の一環として社員はフェラーリ、ポルシェ、ベンツ、さらにはボートまでが乗り放題だという。
しかもなんと1DKの社員寮が無料で入居でき、実質食費もタダ。
生活費がかからないので、社員は二十代、三十代で夢のマイホームを所有しているとか。
この厚待遇の背景にはドライバー不足に対処するためという事情があるそうだが、ちょっとうらやましすぎるぞ。
わざわざ満員の通勤電車に長時間揺られて都内の会社まで通うのがバカみたいだ。
地元企業の底力を見せつけられた。
財政危機にあえぐ街の醤油争い
その千葉県の利根川河口に位置する銚子は、あと数年で財政破綻の恐れがあり、別名「第2の夕張」ともいわれているという。
地元の人々からも「茨城県神栖の工業地帯へ人口が流れている」などの証言があり、あまり景気のいい話を聞けない。
そんな銚子だが、市場ではマグロにまじって、あのマンボウも水揚げされ、人気の寿司ネタになっているという。
この街でまず思い浮かぶ特産物は醤油。
ヤマサとヒゲタの二大メーカーが、熾烈な戦いを繰り広げている。
どの飲食店にもテーブルに両メーカーの醤油が並び、市民もヤマサ派とヒゲタ派に分裂。
通にいわせると、「ヤマサは香りが高くコクがあり、ヒゲタ派は風味豊かでまろやか」だそうだが、抗争の理由は必ずしも味覚の違いだけではないようだ。
地元民のほとんどが、ヤマサかヒゲタのどちらかに関連する企業に勤めている。互いにシェアを争って、このような対立が続いているのだとか。
よそ者の目からすればなんだかなーという気がしないでもないが、銚子から利根川河口をさかのぼった場所に位置する、野田市のキッコーマン醤油もぜひ忘れないでほしい。
横須賀のネタはこれっきり?
東京を取り囲む三県で、もっとも勝ち組と思われる神奈川県からは、横須賀がピックアップされた。
三浦半島の先端という地理的ギャップもあってか、最近は他の地域同様、この街も衰退の危機が叫ばれている。
筆者も数年前ドブ板通りなどをウロついたが、スカジャンの店もだいぶ減って、一時にくらべ閑散としている印象だった。
とはいえかつては昭和の歌姫・山口百恵の「横須賀ストーリー」、最近ではクレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」など、多くの歌謡曲やポップスの舞台にもなった、オシャレなイメージの港町だ。
さぞかし名物が紹介されるだろうと思いきや、スポットがあたったのは予想に反して「のりダンダン」なるお弁当。
ご飯の上に、海苔やおかかをまるで地層のごとく段々に重ねているので、地元の人たちはこの名で呼んでいるのだという。
まさかの方言?
うーん、あまりに話題が地味すぎる。
「横須賀ストーリー」の歌詞ではないが ♪これっきり~で~すか~~とツッコミたくなってしまう。
ま、こんなネタでもなけりゃ、神奈川はちょっとディスリようがない優等生だからねえ……。
テレ東はテレ玉と合併しては
というわけで、『ありえへん世界』が取り上げたのは、日常のほんのささいなニュースばかり。
最近のテレビの企画力の貧困や「どうせテレ東だもんなあ……」という声が聞こえてきそうだが、けして表側だけで判断しないでほしい。
取るに足らない街ネタの裏側には、子育てやフードロス、雇用問題、郊外の衰退など、多くの社会問題が見え隠れしている。
これらを国営放送の報道番組のように、おカタく深刻に報じるのではなく、なにげない日常感覚から迫っていくのがテレ東流。
大ヒット番組『家、ついて行ってイイですか?』で無名の人々の人生にスポットライトをあてた、この局らしい着眼点だ。
まさに庶民の味方、テレ東イズムといっていいだろう。
東京のローカル局ではあるテレ東だが、番組のテイストは洗練された都会人より、むしろ、われらが埼玉県民と相性がいいように感じられる。
この際、テレビ東京は、テレビ埼玉と合併し、手に手をとって関東全域を対象とした巨大ローカル・ネットワークを目指すべきではないだろうか。
東京ディズニーランドや東京ビッグサイトが千葉にあるように、テレビ東京が埼玉にあったって誰も違和感は感じないって。
東京ローカルはどうする?という声が聞こえてきそうだが、『翔んで埼玉』の名セリフをお借りして、ひと言、こう叫ぼう。
「東京都民にはMXテレビでも見せておけ!」
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サイタマの片隅に生えた雑草ライター。県東部の地域フリーペーパーを中心に執筆。得意ジャンルは本、映画、音楽などですが、書く場所がなくてもっぱら個人ブログで発表。春日部市在住。