書店検証『なぜディス』は春日部~幸手市民に届いているか?
ライター : シオ・コージ
このたび当サイトを主宰する鷺谷政明氏が、初の著書『なぜ埼玉県民だけがディスられても平気なのか?』(略称なぜディス)を徳間書店から刊行した。
ぜひすべての埼玉県民に手にとっていただきたい必読の書だ。
君はもう入手したか? 僕はまだだ。
ああ、一刻も早く『なぜディス』を読みたい!
ネットよりも埼玉の書店で買いたい理由
amazonでポチれば2~3日で自宅に届くだろうが、やっぱり本は書店で見つけたほうが喜びもひとしお。
しかも、埼玉を徹底的に論じる『なぜディス』は、ぜひとも埼玉県の書店さんから手に入れたい。
このごろはネット通販に押され、全国の書店さんは深刻な危機に陥っている。
もちろんここ埼玉も例外ではない。
というわけで『なぜディス』を探しがてら、県内の書店でどのくらい本書が置かれいるか、現地調査してみようと思い立った。
広大な埼玉全域をカバーするのはさすがに難しいので、僕がふだんからよく出入りするご近所の書店さん数軒をチェックすることにした。
TSUTAYA南桜井店
まず駅前の書店を調べないわけにはいかないだろう。
駅というのは人が集まる場所、と同時に、最新の情報が集まる場所だ。
TSUTAYA南桜井店は、2階にレンタルビデオショップも入る大型店だが、書店部分の半分近くがファンシー文具売場だったり、最近営業時間が短縮されて、午後11時には閉店してしまうなど、郊外の衰退ぶりが見え隠れする。
品ぞろえも、コミックや雑誌が主体で、文芸書は、一握りのベストセラーだけというお寒い状況。
そんな近所のTSUTAYAに、はたして無名の著者(失礼)のデビュー作なんか置いてあるだろうか?
店員さんに交渉
不安を抱えながら店に入るなり、棚のエンドの目立つ場所に平積みされた、真っ赤な表紙が目にとびこんできた。
『なぜディス』だ!
それも目につきやすい平積み展開ではないか!
さっそく一冊買い求めつつ「この著者さんのサイトで書かせていただいている者です」と事情を話し「ポップの代わりに貼らせてもらえませんか」と「そうだ埼玉カード」を見せる。
そうだ埼玉カード
店員さんは快諾、写真のような即製のディスプレイとなった。
本の真上に「そうだ埼玉」カードが……。
地元も捨てたもんじゃない。
文化的なものに触れるなら東京まで出なければ、という思い込みを大幅に修正することになった。
イオンモール未来屋書店 春日部店
難航するかと思った『なぜディス』探しだが、一軒目で早くも見つかってしまい、少々肩透かしをくらった気分で、次に国道16号沿いのイオンモールへ向かった。
このモールの3階に出店する未来屋書店には、埼玉関連本のコーナーが常設されている。おそらく『なぜディス』もここに並んでいるだろう。
埼玉本コーナーに『なぜディス』がない!
期待をこめて訪れてみたが予想に反し『なぜディス』は見当たらない……。
なぜノンフィクションコーナーにあるのか
なにかの間違いでは、と店内をあちこち探しまわり、ようやく雑多なジャンルの本が並ぶノンフィクションのコーナーで発見した。
ここでも平積みの扱いだったが、内容からすれば埼玉関連本コーナーに置くべきだろう。
若い学生バイト風の店員さんに「どうしてこの場所に?」と訊いてみると「この本、まだ出たばかりですよね。新刊はここに置くことになっているんです」との回答だった。
後日もう一度足を運んだところ、『なぜディス』が場所を移し、埼玉関連本コーナーのセンター入りしているのを発見(下の写真)。
埼玉を論じた本がこれだけ一堂に集まると、壮観な眺めだ。
宝珠堂書店 南桜井駅前北口店
どうやら大きな書店では問題なく『なぜディス』を入手できるようだ。
ではもっと小規模な個人経営の書店さんはどうか?
僕はふたたび地元の駅前に戻り、ロータリーに面した宝殊堂書店をのぞいてみた。
ここは僕が中高生のころから営業している老舗だが、新たに進出したTSUTAYAに押され、いまではすこし影が薄い印象だ。
あまり広いとはいえない店内は、半分近くがカードゲーム用のスペースになっていて、中高生たちが対戦に熱中している。
お店もTSUTAYAに負けてなるものかと集客のための企業努力しているようだ。
個人書店さんも『なぜディス』を応援!
こんな小さな書店でも『なぜディス』はちゃんと並んでいた。
瀬戸内寂聴本のとなりという微妙な場所だがしっかりと平積み展開。
店長さんにお願いしてPOPがわりの「そうだ埼玉カード」を貼らせていただいた。
大型店に負けずに頑張れ個人書店!
文真堂タイムクリップゲオ幸手店
国道16号線の北と南では埼玉の風景は大きく変化する。では北方での入荷状況はどうだろう。
少し足を伸ばし、文真堂タイムクリップゲオ幸手店さんを訪れた。
ここは品揃え的にはけっこう充実しており、ぶっちゃけ駅前のTSUTAYAよりよっぽど面白そうな本が並んでいる。
しかし……店頭に『なぜディス』は見当たらない。
僕はめげずにレジの店員さんに在庫の検索を頼んだ。
店員さんはパソコンに書名を打ち込むと「お待たせしました。入荷はされているようです」といって僕にプリントアウトしたデータを渡してくれる。
たしかに、仕入れ冊数が3になっている。
どうやら書店に入ってはいるが棚には並べられていないようだ。
TSUTAYA杉戸店
同じ16号線の北、旧4号線沿いに位置する杉戸のTSUTAYAでも、やはり入荷されているが店頭には出ていないということだった。
「埼玉ディスり」というゲームは、東京や千葉など他県との関係を把握していないと楽しめない。
16号線以南とくらべると杉戸・幸手は、東京からやや距離感があり、『なぜディス』の面白さがいまひとつ伝わらないのだろうか。
最悪、棚に並ぶことなくそのまま返品されてしまうケースも考えられる。
今回問合せがあったので担当者も一考してくれるのでは、とかすかな望みをいだきつつ、調査を終了した。
結論
埼玉を論じた『なぜディス』が地元埼玉では手に入らない、という皮肉な結果も想定していたが(それはそれでオイシイが)予想に反して、僕がまわった範囲内の書店にはすべて入荷されており、期待以上の収穫だった。
これにはきっと版元さんの力もあるだろう。
少部数、小出版社の本は、なかなか全国の書店に行き渡らないという厳しい現実がある。
文化面ではまだまだおとなりの東京に依存している埼玉県。
『なぜディス』刊行をきっかけに、地元発のカルチャーに火がつくことを願っている。
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サイタマの片隅に生えた雑草ライター。県東部の地域フリーペーパーを中心に執筆。得意ジャンルは本、映画、音楽などですが、書く場所がなくてもっぱら個人ブログで発表。春日部市在住。