町おこしは何のためにやるべきか 前編【そうだ埼玉メルマガ】
ヒットを出す仕組みは美人投票と同じ
やり方次第ではまだギリギリCDを売る余地が残されていた2008年、前職の会社で私は無名のボーカリストと無名のトラックメーカーを起用し「Lumiere」という企画CDを制作しました。
そのCDはTVメディアには一切出ることなく20万枚ヒットという異例のセールスを挙げ話題となりました。
このCDは元々ヴィレッジヴァンガードという雑貨店でヒットさせるよう仕向けたCDで、20万枚のうち13万枚はヴィレッジヴァンガードでのセールスでした。
ヴィレッジヴァンガードという雑貨店は、フラッと立ち寄るお客さんがすごく多いお店です。
フラッと立ち寄っただけのお客さん達が、どうすればこのCDに注目し、このCDを手に取り、購入してくれるか。
みなさんは音楽CDを購入する際、たいてい事前に何かでその情報を知り、そのCDを買いに店舗へ行くと思います。
インディーメーカーでは、テレビなどの大きなメディアに露出させられるような大金をプロモーションに投下出来ないので、事前にその情報を周知させることがなかなか出来ません。
なので、その店舗で出会わせ、その場で購入してもらうにはどうすればいいかと考えました。
パッケージ、タイトル、曲順、展開のされ方、キャッチコピーで興味を引き、まずは試聴してもらう。
そして詳細資料や特典や価格帯で購入意欲を高めてもらう。
プロモーションから営業方法、導入方法、追加プロモーション施策、音の調整から予算の調整まで全てを考え動かしていくのが音楽プロデューサーの仕事ですが、その時に自分の好みやプライドはありません。
つまりこのCDの魅力をどのように伝えられるか。この一点につきるわけです。
株は美人投票と似ているとよく言われます。
自分が好みの女性に投票するのではなく、みんなが好きであろう人に投票できる人が勝つということ。
プロデューサーの仕事というのは、どんなものを扱っていてもその感覚がもっとも大事なんです。
どういうものならみんなが喜ぶか、それを考え実現させるのがプロデューサーの役目です。
自分好みのCDだけを作り、ヒットが出せないプロデューサーは、
「会社はお前の趣味に金出してるんじゃない」
と、よく怒鳴られていました。
好きだから、突き放す
音楽業界にいた時、駆け出しアイドルから地下ドル、インディーズミュージシャン、シンガー、声優、モデル、昔売れてて今は全く売れないアーティストなど色んな人達と仕事をしましたが、突出する人としない人の大きな違いは、どこまで自分がやっていることを突き放せるかでした。
例えばあなたがジャズのサックス奏者だったとします。
あなたは幼少からサックスが好きで、ジャズを愛し、サックス奏者として生きていこうと思っています。
なかなか仕事がなくアルバイト生活でしたが、 ジャズサックス奏者として、音楽テレビ番組に出れることになりました。
ここで結果を残せばいよいよプロとしてやっていける可能性もある大きなチャンスです。
そこで、番組プロデューサーから、「君さ、演奏うまいんだけどジャズ色が強すぎるからもっとポップにしてくれる?そんなジャズ色強いと、聴いてる人が分からないから。もっと分かりやすくさ、今流行りのAKBみたくしてくんないと」
と言われました。
自分が長いこと愛してきたジャズを捨てて、AKBのようなJ-POPを、大事な晴れ舞台でやる。
さて、ここであなたはどうするでしょうか。
私はジャズプレイヤーなんだ、そんなこと出来るか、と言って断るでしょうか。
10人いたら9人がそんな考えでした。
この曲をリード曲にしたくない、こんな衣装は着たくない、そんな曲順は嫌だ、MCでそんなこと話したくない、こんなCDジャケットは嫌だ、そういう風に売り出したくない、などなど、まだ誰にも知られていないアーティスト達はそんな風に自分の理想や主義を貫き、結果、日の目を浴びることなくみんな音楽業界からいなくなってしまいました。
でも10人中1人、「分かりました。ポップスにしてAKBっぽくやります」という人がいます。
私が知る限り、突出していった人はみんなそういう心構えのアーティスト達でした。
いつか有名になって、地位も名声も金も手にして、そこで自分が本当に表現したいジャズを思いっきりサックスで表現してやるんだ、というもの。
これは、踊る大捜査線で、いかりや長介さん演じる和久さんが言った「正しいことをしたければ偉くなれ」という言葉と似ています。
やりたくない環境でも結果を残す
身近な例で話すとすれば、例えばあなたは、エンタの神様や、爆笑レッドカーペット、またはM-1や先日開催されたTHE MANZAIを見たことがあるでしょうか。
あなたはああいった番組を何の気なしに見ていると思いますが、実は芸人さんは、あんなことは本当はやりたくないんだそうです。
誰も、3分~4分の制限時間内で自分のお笑いの才能を判断されたくないからです。レッドカーペットにおいては1分でした。
本当は、練りに練った自分たちの最高のネタをもっとじっくり見せたい。
でも、見たことも聞いたこともない芸人のネタを延々やる番組を、あなたは見続けられるでしょうか。
1分でポンポン出てくるからみんな見れていたんです。
でも、1分で自分の人生をかけた笑いを表現したい人なんか一人もいません。
自己満足か、知って欲しいのか
1992年頃、ボキャブラ天国という番組がありました。あの番組なんて、ただのダジャレです。
「マスター、水割り」というのを、「マスター、目障り」として笑いを取る。
あの当時芸人さんの多くは、
「なんでダジャレなんかやらなきゃいけないんだ」
と、出演を拒んだ芸人さんはたくさんいたと言います。
それでも出演していた爆笑問題やネプチューンは、ダジャレを言うだけでなく、ミニコントにし、キャラクターをつけ、ダジャレを言うという制限の中でも常に思考を凝らし、視聴者を笑わせ人気を得て、今でも第一線で活躍されています。
本当は漫才やコントを見せたかったはずですが、番組主旨に則り勝負し、勝ち上がって行きました。
長々と語ったこの話の終着点は、とどのつまり、自分が満足したいのか、多くの人に知って欲しいのか、この二点に尽きるわけです。
地域プロモーションも町おこしも実はここがもっとも大事なところになります。
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埼玉ポーズを作ったクリエイティブ・ディレクター / SNS総フォロワー12万人 / 小説『ブルーハーツを聴かずに親父は死んだ』web連載中