あなたも埼玉で音楽家になれる!?ワークショップで現代音楽を作ってみた!
そうだ埼玉.com公式ライター : 未衣子
まだ自分で音楽を作ったことがない人。
いつも自分で音楽を作っている人。
音楽との付き合い方にばらつきのある人たちが、一緒に電子音響音楽を作って楽しめる――そんなイベントが、埼玉の各地で行われます。
2016年7月10日、行田市の牧禎舎(まきていしゃ)で、第1回目の「電子音響ピープルプロジェクト2016@SAITAMAワークショップ」が開催されました。
初心者からベテランまで、みんなで音楽を作って学べるこのイベント。
当日のワークショップでは、一体どんな活動が行われたのでしょうか。
で、本当に初心者でも大丈夫なの?!
というわけで、音楽を作ったことがないわたしも、参加してみました!
あなたも現代音楽を作れる!
“電子音響音楽”と聞くと、なにか難しそうな、自分とは縁遠いもののように感じる方が多いかもしれません。
それもそのはず、講師の柴山拓郎先生は、ワークショップのはじめにこんなことをおっしゃいました。
今、音楽の作り手はとても少ないです。でも、ほんとうはもっと多くの作り手がいてもいいんじゃないかな。面白くてヘンな音楽を自分で作って、みんなで楽しんでみましょう!
同じく講師の由雄正恒先生も、こう続けます。
絵を描くのと比べると、音楽を作るのは敷居が高い感じがしますよね。でも、実際はそんなに難しい話ではないのです。たとえば、世の中のすべてのものを“楽器”として見てみたらどうでしょう?
今回のワークショップでは、全員で“音の出るもの”を持ち寄り、その素材を使って自由に電子音響音楽を作ります。
参加者は、いつも自分で音楽を作っている人ばかりではありません。わたしのように、まだ自分で音楽を作ったことのない人も、参加しています。その割合は、ちょうど半々くらいでしょうか。
音楽との付き合い方にばらつきのある人たちが、一緒に制作へ取り組みます。
まずは録音から
(卓上掃除機の音を録音する参加者。スイッチを入れたり、分解したり、叩いたりして音を拾っていました。)
まずは、みんなで持ち寄った“もの”の音を録音します。
今回の参加者が持参したのは、鍋のふた・掃除機・扇風機・卵パック・すのこ・電動車いす・おもちゃのハンマーなど、さまざまです。
わたしが持ち込んだのは、大好きなお酒の空き瓶でした。
そうはいっても、お酒の空き瓶で、どうやって音を出せばいいんだろう……?
すると、講師から「“音楽”にとらわれないで!」とのアドバイスが。
これから音楽を作ろうとしているのに、音楽にとらわれないとは、一体どういうことでしょう?
大きな音、小さな音、安らぐ音、緊張する音、高い音、低い音――子どもの頃に返ったつもりで、音そのものの形を意識して、録音してみてください。
講師の指導の通り、手探りで、聞こえたままの音の感じを、つかんでゆきます。
持ち寄ったものを、楽器のようにリズミカルに鳴らす必要はありません。
たとえば、ガラスの瓶を「こつ……こつ……」とペンで叩きながら「どんな音がするだろう?」と慎重に向き合ってみればいいのです。
すると、これまでに気づかなかったような新しい音色が、自ずと現れます。
いつもなら決して“楽器”とは認識されないものたちが発する音に、耳をすませる――。
不思議なことに、マイクを通してヘッドフォンから聞こえる音は、想像を超えてユニークな表情を見せてくれます。
集めた音の素材を並べて、音楽にしよう
(「Audacity」というフリーソフトを使って制作をします。)
音の素材が集まったら、いよいよ編集です。
パソコンで、自分の録音した音を切り貼りし、だいたい20秒くらいの長さの音楽にしていきます。
録音した音には「エフェクト」という特殊な効果をかけられます。
これを上手に使うと、もとの音がどんな感じだったか分からくなるほどに、音色が大変身するのです。
一同は作業に熱中。自分で録音した音を使って、お絵かきのような要領で音楽を作っていきます。
「やってみると意外とカンタン?!」「しかも結構ハマる……!」各所で声があがりました。
そんなこんなで、夢中になること2時間。あっと言う間に作業の時間が終わってしまいました。
「まだまだ取り組みたかった」と惜しむ声がある中で、各自が作った音楽を保存します。
ソフトの使い方がまったく分からなくても、心配は要りません。分からないことは、スタッフの方が親切に教えてくれます。今日が初めてでも、楽しく作業できますよ!
ワークショップの参加者は、音楽制作のプロによる「面白い音楽にするためのワンポイントアドバイス」も聞けます。積極的に学びたい人にとっては絶好のチャンスですね。
こうして無事、お酒の瓶から音楽が出来あがりました!
作った音楽をみんなで聴いてみよう!
(プロジェクターに映し出されている波のような模様は、みんなが作った音楽です。)
最後は、お待ちかねの「作った音楽をみんなで聴き合う会」です。
ひとりずつ名前を呼ばれて、作ったばかりの音楽を、会場のスピーカーで聴き合います。
名前を呼ばれた人は、ドキドキ……。
自分で作った音楽を大音量で、しかもみんなと一緒に聴くのは、なかなか緊張感があります。
この日の聴き合う会は、「牧禎舎」の開放感あふれる建物に広がる音の響きが、素敵でした。
ワークショップの場所は日によって変わりますから、その日の響きはその建物でしか聴けない、1度きりの貴重な体験となるでしょう。
ひとりの発表が終わる度に、辺りがざわつきます。
「あの真ん中あたりで出てきた音は、どうやって作ったの?」と、聞き手と制作者とのあいだにコミュニケーションが生まれる場面もありました。
素材を録音した時には想像もつかなかった多彩な音楽が、参加者の数だけ完成します。
自分で音楽を作るだけでなく、他の人の作った音楽を聴くのは、とても刺激的です。
みんなでやるから、学べることがある!
(東京電機大学理工学部 情報システムデザイン学系 作曲・音楽文化研究室のみなさんが、ワークショップの進行と制作を手伝ってくれました。)
ワークショップの終わりには、みんなで今日の感想を言い合います。
中でも印象的だったのは「いつも自分で音楽を作らない人の作品の方が、逆に意外性があって面白かった」という、ある参加者のコメントでした。
いつも自分で音楽を作っている人も、まだ音楽を作ったことのない人と関わってみて、新たな発見があったようです。
もちろん、これまでの音楽との付き合い方にかかわらず、全員が制作の楽しみにどっぷり浸れたのは、言うまでもありません。
参加者が作った音楽は、その後、講師による編集を経て、共同制作の作品として完成されます。
そして、この先に開催されるワークショップの分も含めて、10~20曲の作品をまとめたCDを販売し、収益は制作者みんなで山分けするそうです。
一生懸命に作った音楽をどこかで誰かに買って聴いてもらえたら、ちょっと嬉しいですね!
どうしてこのワークショップをやっているの?
電子音響ピープルプロジェクトとは、講師の柴山拓郎先生が、2015年に立ち上げたプロジェクト型アートです。
「電子音響音楽やコンピューター音楽も、“リレーショナル・アート”の分野と関わる時期に差しかかっているのではないか」という観点から、このようなワークショップを開催しています。
リレーショナル・アートとは、芸術的な表現を、人間同士のコミュニケーションへとつなげてゆくようなアートのこと。
これまでは、ひとりで黙々と制作するようなイメージだった電子音響音楽を、みんなに開かれた環境へ持ち込んでみたのが、今回のワークショップです。
プロと一緒に電子音響音楽を作り、CDを売って利益を分配する――このプロセス全体がひとつのアート作品となっています。
電子音響ピープルプロジェクトでは、こういった取り組みを通して、電子音響音楽を多様な人々と共に作る“共創的フィールドの共創”を目指しています。
そもそも電子音響音楽とは、フランスの音響技師ピエール・シェフェールが1948年に始め、それから日本に輸入された現代音楽の1種です。
これまでの電子音響音楽は、まるで“難解な芸術音楽”のようにとらえられ、難解な音楽を理解できる一部の芸術家のみが携わるものとして扱われる状況にありました。
こういった文化的背景を持つ電子音響音楽を、敢えてその背景と切り離し、自分たちがどう作って、どう楽しんでいくのか――。
今後のワークショップに参加する方は、ぜひ体感してみてください。
今回の「電子音響ピープルプロジェクト2016@SAITAMAワークショップ」は、SaitamaMuseForum (SMF)・ あなたと どこでも アート 実行委員会・埼玉県立近代美術館が主催しています。
今後のワークショップの日程
今後の「電子音響ピープルプロジェクト2016@SAITAMAワークショップ」の日程は、以下の通りです。
・vol.2 7月24日(日) @埼玉県近代美術館
・vol.3 8月 7日(日) @市民会館おおみや
定員は10名で、先着順で締切となります。参加費は無料です。
ご興味のある方は、お早めにお申し込みください!
※イベントのお申込みは、こちらから 電子音響ピープル公式HP イベント
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埼玉で文章を書くうさぎ。ゴーストライターとして生計を立てている。好きな埼玉は、鳥居観音、聖天宮、オートレストラン鉄剣タロー、ご当地キャラのカパルなど。鴻巣市在住。